医療安全教育セミナー2009夏季 (医療安全管理研修会) ― 医療安全システムの標準 − 会期 2009年8月5日(水) 〜 7日(金) 会場 東京大学医学部鉄門記念講堂 (1日の定数280人) 主催 国際予防医学リスクマネージメント連盟 |
プログラム
趣旨: 本教育プログラムは、高度な医療安全活動を構築するための最新の資料を与えるもので、内容は毎年新しい話題を取り上げています。
なお、本プログラムは、厚生労働省の診療報酬改定による「医療安全対策」として診療報酬申請に加算する際に、加算の対象となる2009年度の研修教科内容の1部にもなります。この場合は、2009年度冬季セミナー(2010年1月19〜21日の3日間実習)と併せて6日分を申請することをお勧めします。参加者には受講証明書を発行いたします。
受講対象者: 学会員、医療施設経営者、医療安全管理者(医科と歯科)、リスクマネージャー、医薬品安全管理者、医療機器安全管理者、医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、放射線技師、臨床検査技師、法関係者、医療事務関係者、医療産業界関係者、学生、市民、その他
総合司会: 近藤 美希 (東京大学大学院学際情報学府)
(第1日目) 2009年8月5日(水) 午前10時〜午後5時
東京大学医学部鉄門記念講堂
『医療安全の制度と組織』
受付開始 午前9時
(8月5日午前の部) 医療安全の院内組織と医療事故調査のあり方
午前10時 開 会
午前10時〜午前10時50分 (質疑5分を含む) 特別講義
(座長) 森 功 医真会 八尾総合病院 理事長
第5回日本予防医学リスクマネージメント学会学術総会(2006年度)会長
「医療事故に関するリスク管理と危機管理のための院内組織の構築のすすめ方
- 飯塚病院の事例を通じて」
田中 二郎 麻生グループ・飯塚病院(福岡県) 院長
(概要) 本院はその医療安全活動の水準が日本で大変優れている医療機関として、学会顧問の方々より数年前より指摘されていました。今回、その高度な医療安全活動を組織化した院長により、医療安全の院内組織の発展段階を含めた病院組織化・運営での要点を講義いただきます。
午前10時〜午前10時50分 小休憩
午前11時〜午前12時 (質疑5分を含む) 特別講義
(座長) 森 功 医真会 八尾総合病院 理事長
第5回日本予防医学リスクマネージメント学会学術総会(2006年度)会長
「法からみた医療事故における院内での内部報告書の作り方」
阿部 隆徳 大阪大学大学院医学研究科特任教授、弁護士、米国ニューヨーク州弁護士
(概要) 院内事故調査委員会が作成すべき内部報告書は医療過誤の検証の最も重要な資料の1つですが、全国的にその標準化は行われておりません。阿部先生は東大法学部を卒業後、弁護士として国際的に活躍され、国内の大学医学部でも実践的な教育を行い、また、医療事故調査モデル事業の嘱託などを通じて、医療安全に関する法律の実務を行っております。国際的な観点も踏まえて、内部報告書の作成に関する法的なポイントが解説されます。
午後12時〜午後1時 昼食
(8月5日午後の部) 医療安全活動の標準化
午後1時〜午後1時50分 (質疑5分を含む) 特別講義
「医療現場で監視すべき病原体と院内感染対策のための法令およびマニュアル」
--- 耐性菌や新型インフルエンザ(鳥と豚由来のウィルス)に関する対策の基本的考え
荒川 宜親 国立感染症研究所細菌第2部部長
(概要) 院内感染は患者と医療従事者をターゲットとする広義の医療事故であり、また、新型インフルエンザについてもその院内感染対策が急務です。荒川先生は、厚生労働省科学研究費の新興・再興感染症研究事業において広範なリスク対策に関する研究を最近に取りまとめられました。今回は、その成果の一部である「医療機関における院内感染対策マニュアル作成のための手引き(V5)」作成の経緯を紹介し、併せて、今後に医療現場で監視や対策が必要と思われる病原体の紹介と感染症の予防と対策のための法令の紹介が行われます。
午後1時50分〜午後2時 小休憩
午後2時〜午後5時 シンポジウム 「医療の安全基準
– 実効的なマニュアルの作成とその運用」
(座長) 矢野 真 武蔵野赤十字病院 院長特別補佐
(医療安全担当)
清水 利夫 国立国際医療センター副院長(医療安全担当)
江原 一雅 神戸大学付属病院 (医療安全担当)
(概要) 全国の医療機関では医療安全に関する様々なマニュアルが独自に作成されています。実用的な安全マニュアルの作成は難しく、また、マニュアルの円滑な運用、つまり、職員のコンプライアンスをどう上げるかも重要課題です。本シンポジウムは、全国の医療機関が抱えるこれらの問題をどのように解決したかについて、先進的な取り組みを行った様々な規模の医療機関の事例を紹介いただき、参加者全員で情報と体験を共有します。
午後2時〜午後2時30分
京大病院の事例 長尾 能雅 (京都大学医療安全管理室)
午後2時30分〜午後3時
神戸大病院の事例 江原 一雅 (神戸大学医療安全管理室)
午後3時〜午後3時30分 国立国際医療センターの事例 菊池 邦子 (国際医療センター医療安全管理室)
午後3時30分〜午後4時 近森会 近森病院の事例 青木 千利 (近森病院前医療安全管理室)
午後4時〜午後4時30分 武蔵野赤十字病院の事例 矢野 真 (武蔵野赤十字病院)
午後4時30分〜午後5時 総合討論
午後5時 第1日目閉会
(第2日目) 2009年8月6日(木) 午前9時〜午後5時
東京大学医学部鉄門記念講堂
『医療安全の教育とコミュニケーション』
受付開始 午前8時
(8月6日午前の部) 「職員に対する医療安全教育のあり方と臨床コミュニケーション」
(座長) 木内 貴弘 (東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野教授)
午前9時〜午前9時50分 (質疑5分を含む) 講義
「院内における医療安全教育の現状と課題」
布施
淳子 山形大学医学部基礎看護学教授
(概要) 医療安全教育は日本ではその萌芽期にあたります。ここでは、日本の医療機関で行われている医療安全教育の現状を整理し、その問題点を報告いただきます。
午前9時50分〜午前10時 小休憩
午前10時〜午前10時50分 (質疑5分を含む) 教育講演
「安全教育に係る教育科学の原理と方法」
衛藤 隆 東京大学大学院教育学研究科・教育学部健康教育学教授
(概要) 衞藤先生は東大医学部を卒業後、小児科医としての臨床経験10年の後、国立公衆衛生院における研究職を経て東大教育学部にて健康教育を教育研究分野とする教授職を務めています。中央教育審議会委員、日本医師会学校保健委員会委員長など医療と教育の両分野に視野をもつ専門家として活躍しています。日本小児保健協会会長、日本健康教育学会理事長、日本セーフティプロモーション学会理事長も務めています。今回は、世界的に著名なスウェーデン・カロリンスカ医科大学での安全推進に関する専門家研修の経験を元に、安全に関する基本的な考え方を予防の立場から紐解き、安全に係る教育学の理論と実践を講義します。
略歴 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%9E%E8%97%A4%E9%9A%86
午前10時50分〜午前11時 小休憩
(報告) 臨床コミュニケーションのあり方
日本での医療訴訟の原因の7割が医療従事者と患者・遺族のミスコミュニケーションであるという報告があります。そのために、臨床現場での適切なコミュニケーションの必要性が全国的に指摘されています。この分野において東京大学時代から研鑽をつまれ、日本の草割け的存在であるお二人をお招きして、米国の超一流大学の1つであるジョンスホプキンス大学医学部でのプログラムを含めて、国際的な観点からの話題を提起いただきます。これらは日本での医療安全の更なる向上に資するものです。
午前11時〜午前11時45分 (質疑5分を含む) 講義
「臨床コミュニケーション (1)」
石川 ひろの 滋賀医科大学医学文化学講座行動科学准教授
午前11時45分〜午前12時30分 (質疑5分を含む) 講義
「臨床コミュニケーション
(2)」
高山 智子 国立がんセンター
がん対策情報センター 診療実態調査室長
午前12時30分〜午後1時30分 昼食
(8月6日午後の部) リスクの極めて高い医療分野における医療安全
午後1時30分〜午後2時20分 (質疑5分を含む) 特別講義
「救急医療における医療安全の現状と課題」
丹正 勝久 日本大学医学部附属板橋病院 副病院長、救急医学系主任教授
第8回日本予防医学リスクマネージメント学会学術総会(2009年度)会長
(概要) 救急医療は極めて短時間に様々な救急救命術を施すために、極めて高いリスクとクライシスを内在化している医療分野の1つです。そのために、そこでの医療安全は危機管理として高度な対策が必要です。日本の救急医学講座として最も高度な実践を展開している本院での経験を紹介し、その問題点ならびに今後の課題が報告されます。
午後2時20分〜午後2時30分 小休憩
午後2時30分〜午後5時 シンポジウム
「周産期医療に内在するリスクとその対策」
---
妊娠・出産に内在する種々のリスクを患者にどのように患者に伝えるか ---
(座長) 野田洋一 日本予防医学リスクマネージメント学会西日本本部会長、滋賀医科大学名誉教授
滋賀県産婦人科学会会長、第7回日本予防医学リスクマネージメント学会学術総会(2008年度)会長
(セッションの狙い): 先に行われた第7回予防医学リスクマネージメント学会学術総会の議論の中で明らかになった事の一つに、「社会に対して周産期医療に内在する種々のリスクを積極的に伝える必要がある」ということであった。このセッションでは、3名の異なった立場からの演者によって、妊娠から出産に至る間に存在するリスクについて何をどのように伝えるべきかについて講演を頂き、意見交換を行います。
午後2時30分〜午後3時20分
講演1 基調講演 「患者の自己決定権を保障する立場からの提言」
野田 洋一 滋賀医科大学名誉教授
午後3時20分〜午後3時30分 小休憩
午後3時30分〜午後4時
講演2 「妊娠・出産に内在するリスクの伝達をどのようにするべきか」
久保 髟F 国立成育医療センター周産期診療部産科医長
午後4時〜午後4時30分
講演3 「妊娠出産について患者が求める情報とは何か」
堀 康司 弁護士、愛知県弁護士会
午後4時30分〜午後5時
総合討論
午後5時 第2日目閉会
(第3日目) 2009年8月7日(金) 午前9時30分〜午後4時30分
東京大学医学部鉄門記念講堂
『医療安全の技術と法』
受付開始 午前8時30分
(8月7日午前の部) 医療安全のための法と制度
午前9時30分〜午前10時50分 (質疑5分を含む) 特別講義
(座長) 武市 尚子 千葉大学医学部法医学、世界健康リスクマネージメントセンター(WHRMC)客員准教授、東大法卒
「ポストゲノム時代の医事法と医療安全 –
ドイツ医療界の事例を踏まえて」
加藤 久雄 (慶應義塾大学法学部元教授、弁護士)
(概要) 加藤先生は、医療倫理など様々な医療問題についてドイツでの医学と法に関する膨大な著作も発表されています。ドイツ医療界は英米の医療界とはかなり異なり、医療安全の分野でも大変優れた様々な活動が存在します。これらについての報告を交えて、ポストゲノムという新らしい時代に向けての医療と医療安全に関する講義を詳細に行っていただけます。
午前10時50分〜午前11時 小休憩
午前11時〜午前12時 (質疑5分を含む) 特別講演
(座長) 澤 充 日大板橋付属病院 院長、 全国医学部長病院長会議前副会長
「事故と医療と既往症の狭間の死因究明」
吉田 謙一 (東京大学大学院医学研究科・医学部法医学教室教授)
(概要) 事故で外傷を負った人に対する診療行為が誘因となって予期しない死亡を遂げる人が少なくない。遺族にとっては医療過誤、医師にとっては避けえぬ合併症、保険会社にとっては既往症であって欲しい範疇の死亡、について解説する。救急医学会が厚労省の事故調査委員会に反対するこれらの事例の解剖や死因究明の意義を解説する。
午前12時〜午後1時 昼食
(8月7日午後の部) 医療過誤の予防と法的対応
午後1時〜午後1時50分 (質疑5分を含む) 講義
(座長) 武市 尚子 千葉大学医学部法医学、世界健康リスクマネージメントセンター(WHRMC)客員准教授、東大法卒
「産科医療を取り巻く医療安全策とは?」
―分娩時医療過誤事例の医学的視点と争点の変遷を顧みて―
平原 史樹 (横浜市立大学大学院医学研究科生殖生育病態医学(産婦人科学)教授、同付属病院前副院長)
(概要) 産科は日本の医療界で最も医療訴訟の多い分野であり、また、産科はリスクが大変高い医療行為です。ここでは、過去30年にわたる分娩時医療過誤事例をもとに日本における特徴の経年変化を紹介し、本分野で今後必要となる医療安全対策が解説されます。
午後1時50分〜午後2時 小休憩
午後2時〜午後2時50分 (質疑5分を含む) 講義
(座長) 武市 尚子 千葉大学医学部法医学、世界健康リスクマネージメントセンター(WHRMC)客員准教授、東大法卒
「免責を得る医療の安全基準に関する法的要件 −米国の事例を踏まえて」
平野 晋 (中央大学総合政策学部教授、ニューヨーク州弁護士)
(概要) 平野先生は長い間米国法実務に携わってきました。米国での医療事故判例の歴史的変遷を紹介するとともに、医療安全の基準が米国でどのように取り上げられるようになったかを講義します。これにより、医療機関が免責となる医療安全活動にはどのような法的要件が存在するかが解明されます。
午後2時50分〜午後3時 小休憩
午後3時〜午後4時30分(質疑5分を含む) 講義
(座長) 武市 尚子 千葉大学医学部法医学、世界健康リスクマネージメントセンター(WHRMC)客員准教授、東大法卒
「医療事故の法的対応 −賠償責任の考え方など」
井上 清成 (東京弁護士会所属、医療法務弁護士グループ代表、東大法学部卒)
(趣旨) 演者は医療事故と法に関して、多数の医療機関での顧問弁護士として豊富な経験を有しています。これらの具体的な経験を踏まえて、医療事故にかかわる賠償責任の法的考え方などの基本的概念を講義します。
午後4時30分 全体閉会
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