医療安全教育セミナー2006後期
(日本語社会人教育プログラム)
医療のリスクマネージメントに関する社会人教育の開催が、5年前の本学会設立当時から日本全国より要望されました。これを受けて、本学会は試験的な教育プログラムを着手しました。その成果を基に、2006年度は集中講義形式を採用し、2006年1月と8月に集中講習会を東京大学で実施し、全国各地から多数の方が参集され、定数オーバーになりました。
多数の参加者から「極めて進んだリスクマネージメントの講演内容であり、今後とも継続して実施してほしい」との強い要望が出されました。今回は、「皆で行う病院・医局の改善 −複雑な病院組織の内部エラーに対するスマートな改善」をテーマとして、この分野で日本を代表する講師の方々によって解説をいただくことができました。
また、医療事故は病院というシステム(組織)によるエラーが介在していますので、エラー発生にかかわる原因を個々の病院でグループにより事故事例から発見する方法をグループ実習形式で習得します。同時に、このグループによるエラー原因の発見方法は、安全に関する職場意識の向上を図り、病院職員ないし医局職員の安全意識の改善を永続的に促す優れた実践的方法です。
なお、今回の冬季集中講習会の内容は、専従リスクマネージャーの養成として厚生労働省の掲げる教育内容にも対応し、8月の夏季集中講習会に引き続いて、不足分の科目でもあります。しかし、あくまで、全国病院の医療安全のための社会人教育ですので、後期のみでもご自由にご参加ください。
酒井 亮二 (国際予防医学リスクマネージメント連盟理事長)
吉田 謙一 (東京大学大学院医学研究科法医学教授)
安全な医療は医療の進歩における重要な課題である。医療安全の目的としては@健康被害を生じさせない、A万一健康被害が生じた場合は最小限に止める、B再発の防止、とまとめることができる。基本的には医療従事者一人一人が医療安全に対する自覚をもつことであるが、実際にはどのように自覚を持たせるかが問題であり、このために医療機関には医療安全のための組織の構築が求められている。組織の骨格については法令などにより規定されているが、上記の目的のためには医療機関ごとに様々な取り組みがあってはじめて可能になる。
具体的な内容としては、健康被害の防止には患者からの苦情の受付、インシデント、アクシデント事例の収集と分析に基づく対策が重要である。健康被害の軽減と回復に対しては集学的なリスクマネージメントが求められ、日頃の対策ならびに迅速な対応が求められる。さらに再発の防止には情報提供とそれに関する周知・理解されたことの確認が求められる。これらの活動に関する各医療機関の対応を共有することは医療安全組織の構築に極めて有用である。
澤 充 (全国医学部長病院長会議副会長、日本大学医学部附属板橋病院長)
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